マグネシウム

歴史

マグネシウムが人体に必要なミネラルであることが認識され始めたのは、20世紀初頭です。マグネシウムの重要性を特に強調したのは、フランスの生理学者として知られるジャン・バンダンという人物でした。彼は、1930年代にマグネシウムの生理学的役割についての研究を行い、それが人間の健康にとって重要であることを明らかにしました。

バンダンは、マグネシウムが神経伝達、筋肉の収縮、エネルギー生産、タンパク質合成など、多くの生体機能に深く関与していることを示しました。彼の研究は、後の科学者たちによってさらに発展し、今日ではマグネシウムが健康維持に不可欠なミネラルであることが広く認識されています。

機能

  1. エネルギー生産と代謝:
    • ATP(アデノシン三リン酸)の活性化に必要
    • グルコースの利用とインスリンの作用の調節
    • 脂質、タンパク質、核酸の代謝に関与
  2. 神経系と筋肉機能:
    • 神経伝達と筋収縮の調節
    • 神経細胞の興奮性の調整
    • 筋肉のリラックスに必要
  3. 心血管系の健康:
    • 心拍数の調節
    • 血圧の維持
    • 心臓の健康に対する保護作用
  4. 骨格の健康:
    • 骨密度の維持に役立つ
    • カルシウムとビタミンDの代謝に関与
    • 骨の形成と維持に必要
  5. 免疫系と全身の健康:
    • 免疫機能のサポート
    • 抗炎症作用
    • 体内の酸-塩基バランスの維持
  6. 皮膚のバリア機能の維持:
    • マグネシウムは皮膚細胞の成長と分化を助け、皮膚のバリア機能を維持するのに役立ちます。このバリア機能は、外部からの有害な物質や病原体の侵入を防ぎ、水分の保持にも寄与します。
  7. 皮膚の修復と再生:
    • 傷の治癒過程において、マグネシウムは皮膚細胞の再生と修復を促進します。また、炎症反応を調節し、適切な傷の治癒をサポートする役割を果たします。
  8. 抗炎症作用:
    • マグネシウムには抗炎症特性があり、皮膚の炎症を軽減する効果があります。これは、特定の皮膚疾患や状態(例えば、湿疹や敏感肌)に対して有益です。
  9. 老化防止の効果:
    • マグネシウムは抗酸化作用を持ち、フリーラジカルによる損傷から皮膚を保護することで、皮膚の老化を遅らせる効果があります。
  10. 紫外線からの保護:
    • 紫外線(UV)曝露は皮膚の老化や損傷を引き起こす可能性がありますが、マグネシウムはUVによる損傷から皮膚を保護する役割を果たすことがあります。

一日推奨摂取量

マグネシウムの一日推奨摂取量は、成人男性では400〜420mg、成人女性では310〜320mgとされています。これらの量は食品やサプリメントから得られるマグネシウムを含みます。妊娠中の女性には350〜360mgが推奨され、授乳中の女性には310〜320mgが推奨されています。これらの量は、一般的な健康維持のための量であり、特定の健康問題のある人や特定の栄養療法を行っている人では異なる場合があります​。

マグネシウムの摂取経路

マグネシウムの摂取方法には経皮的方法と経口摂取がありますが、どちらが「ベター」かは個人の状況や好みによります。

  • 経皮的方法: スキンクリームやオイルによるマグネシウムの吸収は、消化器系を経由せずに直接血流に入るため、特に消化器系の問題がある人に有益です。しかし、経皮的な吸収率と効果に関してはまだ十分な研究がされていない面もあります。
  • 経口摂取: 食品やサプリメントからの経口摂取は、マグネシウムのレベルを効果的に上げる一般的な方法です。ただし、高用量では下剤効果があることや、消化器系の問題がある場合に吸収が低下する可能性があります。

選択は、個人の健康状態、消化器系の問題の有無、好み、そしてマグネシウムの必要量によって異なります。医療専門家と相談することをお勧めします。

マグネシウムを含む食品

マグネシウムが豊富な食品には、ナッツや種子、豆類、全粒穀物、低脂肪乳製品、葉物野菜、果物、野菜、チョコレートなどがあります。具体的には、アーモンド、カシューナッツ、亜麻仁、ピーナッツ、かぼちゃの種、チアシード、黒豆、枝豆、ライマメ、キヌア、シュレッドウィート、無脂肪乳、低脂肪ヨーグルト、ほうれん草、スイスチャード、コラードグリーン、アボカド、バナナ、パパイヤ、ブラックベリー、グリーンピース、スイートコーン、皮付きジャガイモ、ダークチョコレート(70%〜85%カカオ)などがあります。これらの食品には、マグネシウムだけでなく、ビタミン、他のミネラル、フィトケミカルなど、さまざまな栄養素が含まれます。

にがりについて

にがりは、主に塩化マグネシウムを含む海水から塩を取り出した後の副産物です。豆腐を作る際には、にがりが凝固剤として用いられます。にがりに含まれるマグネシウムは体に有効であり、心臓の健康、筋肉機能、神経システムの調節などに役立ちます。一般的には、にがりは安全であるとされていますが、過剰摂取は避けるべきです。にがりの適量についての特定のガイドラインはありませんが、マグネシウムの一日推奨摂取量を参考にして、適量を摂取することが重要です。

まとめ

マグネシウムは人体において多くの重要な機能を果たします。これにはエネルギー生産、神経伝達と筋肉の調節、心血管系の健康維持、骨密度の維持、免疫機能のサポートなどが含まれます。また、抗炎症作用や老化防止効果もあります。マグネシウムは300以上の酵素系に影響を与え、細胞機能、タンパク質合成、遺伝子の表現においても重要な役割を果たしています。

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